- 2025.7.2
- 服部内科クリニック
- 投稿者:院長 服部正樹

◆ 高血圧の新しい基準
日本高血圧学会は、5年ぶりとなる高血圧治療ガイドラインを2019年4月に発表しました。
この改訂により、これまで「正常高値(130~139/85~89mmHg)」とされていた血圧範囲が「高値血圧」とされ、高血圧予備軍として注意喚起されることになりました。
そもそも、高血圧は本当にそんなに悪いものなのでしょうか?
なんとなく高血圧の人は元気なイメージを持っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、高血圧を放置すると、将来重大な病気を引き起こし、寿命を縮める原因となることが分かっています。
1. 高血圧とは?
高血圧とは、病院や健診などで測定した血圧が
- 収縮期血圧140mmHg以上 または
- 拡張期血圧90mmHg以上
の状態のことを言います。
また、自宅で測定する「家庭血圧」では、それより低い
- 135mmHg以上または85mmHg以上
が高血圧の基準となっています。
2. 高血圧が引き起こす主な病気
高血圧は自覚症状がほとんどないため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれることもあります。実際、以下のような深刻な病気の原因となります。
① 動脈硬化
高い圧力に対応するために血管の壁が厚く硬くなり、内腔が狭くなります。これが全身の血管や臓器で起こります。
② 狭心症・心筋梗塞・脳卒中
動脈硬化が進むと血管が詰まりやすくなり、心臓病(狭心症・心筋梗塞)や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などのリスクが高まります。
③ 動脈瘤・大動脈解離
高血圧による動脈硬化の影響は太い血管にも現れ、動脈瘤や大動脈解離の原因となります。
④ 認知症
高血圧が持続すると自覚症状のないレベルで小さな脳梗塞が起き、やがて血管性認知症に繋がります。また、アルツハイマー型認知症の発症にも関与しているという報告もあります。
3. 高血圧の予防と治療
高血圧の予防・治療で最も大切なことは、生活習慣の改善です。
① 減塩
最も効果的なのが塩分の制限です。特に日本人は塩分過剰摂取による高血圧が多く見られます。塩分摂取を控えるだけで、血圧が改善することはよくあります。
目標は1日6g以下。急に減らすのではなく、年に1gずつ減らすなど、無理のない方法で継続しましょう。
② 肥満の防止
皮下脂肪が多いと末梢血管を圧迫し、高血圧になりやすくなります。日頃の摂取カロリーを少し控える意識を持ちましょう。
③ 適度な運動
有酸素運動(ウォーキングなど)を習慣化することで血圧の改善、肥満や脂質異常症の予防にもなります。
④ バランスの良い食事
塩分を控えると同時に、塩分を排泄する働きのあるカリウムが豊富な野菜や果物を積極的に摂りましょう。たんぱく質も適量を心がけ、摂取カロリーは控えめに。
⑤ 穏やかな心を保つ
カッカとしている人に、「そんなに怒ると血圧が上がりますよ」と言う人がいますが、実際怒りやストレスも血圧を上昇させます。日々、穏やかに過ごすことが何よりの健康法です。
⑥ 薬による治療
生活習慣を改善しても血圧が治療目標まで下がらない場合は、薬を服用していただくこともあります。
「血圧の薬は飲み始めたら一生やめられない」と思っている方も多いですが、実際には約3割の方が薬を中止できるという報告もあります。
ただし、薬をやめた後も血圧の管理は続け、再び上昇した場合にはすぐに服薬を再開する必要があります。
4. 最後に
高血圧は自覚症状がないまま、知らず知らずのうちに進行し、さまざまな病気の原因となります。
しかし、早期に気づき、対処することで予防が可能です。
まずは家庭で血圧を測ることから始めてみませんか?
継続的なチェックと生活習慣の見直しで、健康寿命を延ばしていきましょう。