「全然眠れないのですが ・・・」



1.日本人と睡眠不足

「不眠症」はよくある病気で、日本人の5人に1人は「睡眠で休養が充分にとれていない」という調査報告があります。

最近では睡眠不足を睡眠負債と名づけ、負債を蓄積するとがんや認知症発症のリスクが高まるとする報告や、睡眠導入薬を(長期間、多量に)服用していると認知症のリスクが高まるという報告がされて、薬に対する不安が助長され、どうしたら良いのか迷うことも少なくありません。
また、不眠に効く薬やサプリメントが薬局でも売られています。
結構な値段であってもそこそこ売れているようです。
それでも眠れない人はかかりつけ医で睡眠導入薬を処方してもらうことになります。
たいていは「軽い薬にしておきます」「のみ過ぎはクセになるので気をつけて」という注意がつきます。
恐る恐る飲んでみると、大体は寝つけるようになります。

しかし、それでも眠れない頑固な不眠があります。
不眠が続きイライラし、「何とかして下さい!」と主治医に訴えると、「これ以上強い薬は出せません。専門医を紹介します」ということで精神科や心療内科を受診することになります。

2.「不眠恐怖症」と「うつ病」による不眠

こうして受診することになった「本格的な」不眠症には、代表的なものとして2つのタイプがあります。
その1つが「不眠恐怖症」です。
「眠れないのではないか」と心配し、心配するから結局寝つけない。
何時間かして、ようやくうとうとするが寝過ごしてはいけないと思い結局熟睡できない、昼間ぼーっとして調子悪い、今夜も寝るのが怖い、というタイプです。

人間眠れないことはかなりの苦痛です。
それまで不眠の経験が無い人でも、いやむしろ経験の無い人ほど一旦不眠を経験してしまうと眠れないことの恐怖が大きくのしかかるようになります。

2つ目は「うつ病」に伴う不眠です。
うつ病の場合は、一応は寝つけるが朝早く目が覚めてしまうというパターンが典型的なものになります。
うつ病には軽いものから重いものまでいろいろなレベルがありますが、不眠は必ずといってよいほどみられる症状です。

これらの「不眠恐怖症」も「うつ病性不眠」も原因は違いますが、不眠に対する治療は共通するところがあります。
薬物による治療と、「眠れないこと」に対する考え方の修正です。

薬物療法としては睡眠導入薬では不充分な場合がほとんどです。
うつ病性不眠には睡眠導入薬よりも抗うつ薬が有効です。
「不眠恐怖症」の不眠に対しても軽い抗うつ薬が効果的です。
「不眠恐怖症」も長く続くと気分は “ うつ ”に傾きます。
うつ病でも不眠が続くと不眠に対する不安、恐怖感が強くなってきます。
これに対して眠れれば安心できて気分も良くなり、安心できれば更に良く眠れるという好循環が生れれてきます。

「不眠恐怖症」の恐怖は「このままずっと眠れない」「昼間何もできない」「倒れてしまう」等々というものです。
「寝不足でもそこそこやれていれば良い。いつかは眠れる、寝不足で死んだ人はいない」という気持が出てくれば恐怖は解消していくはずです。

うつ病では悲観的な考えしか浮ばず、不眠に対しても諦めてしまいがちです。
「今の不調はいずれ良くなるはず、元々は眠れていたし、気分も良かった」という気持が思い出せれば前向きになってきます。
「あれこれ考えるよりも、まず薬で眠れるようにする。安心したところで気持や考えを整理し、それから薬は不要にしていけばよい」という心構えを基本にしていただきたいと思います。

以上の代表的な不眠以外にも様々な病気に伴う症状として不眠がみられます。
不眠の原因となる病気の可能性を探っていくことはもちろんですが、不眠に対しては必要に応じて精神科、心療内科の受診をお勧めします。

(エスエル医療グループニュース No.148 2018年4月)

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