- 2026.7.6
- 森川クリニック
- 投稿者:院長 岡田 久

てんかんと睡眠に密接な関係があることは,古くは紀元前のバビロニア時代に記されています.
最近では,一般診療でも様々な疾患と睡眠との関連がいわれており,具体的には高血圧,不整脈,糖尿病,生活習慣病,脳卒中などとの関連でも睡
眠診療への注目が集まっています.
てんかんについても,睡眠障害によりてんかん発作が誘発されることは知られていますが,欧米では,19 世紀なかごろ Jackson によりてんかんの科学的研究がはじまり,1929 年の Berger が脳波記録の最初の報告をし,1968 年には Rechtschaffen & Kales による標準的な客観的な睡眠評価がはじまり,その後,てんかんと睡眠に関する研究報告は飛躍的に増加しています.
てんかんと睡眠の関連は幅広く,ここでは,睡眠障害によるてんかん発作への影響,てんかん発作が睡眠に及ぼす影響,睡眠とてんかん発作の関係,そして睡眠時異常行動とてんかん発作の鑑別についての概略をお話します.
睡眠障害によるてんかん発作への影響
睡眠不足が臨床的てんかん発作を誘発することは,経験的にも知られていて,過労や飲酒などをともなっていることも多く,睡眠不足だけが原因
であるとはいえない場合もありますが,睡眠不足が発作の一つの誘因として考えられる場合は,睡眠衛生指導を行っていく必要があります.
睡眠衛生とは良い睡眠がとれるためになすべきことであり,常識的な内容ですが,実際は実践できてないことが多く,睡眠衛生の状況を確認することは,様々の疾患の診療にも重要です.
てんかん患者さんにおいては,夜間覚醒などの睡眠関連の症状がよくみられるので,睡眠時の状況を詳しく確認する必要があります.
睡眠衛生に関連したある調査では,100 人のてんかん患者さんのうち 37% が自分の睡眠に満足していなくて,自分の睡眠に満足していない群では,運動が足りなかったり,睡眠が不規則だったり,昼間に居眠りをしたり,睡眠前に飲酒や喫煙・カフェイン摂取や睡眠環境の問題など,睡眠衛生に関連した問題があったと報告しています.
そして,睡眠が不良な群は良好な群より発作コントロールが不良であったとも報告しています.
また,睡眠障害の一つである睡眠呼吸障害により発作頻度が悪化することがあり,持続的気道陽圧(CPAP)治療や睡眠時の姿勢の対処により閉塞
性無呼吸症候群(OSAS)をコントロールすることによって,てんかん発作が減少することも報告されています .
てんかん発作が睡眠に及ぼす影響
てんかん発作により睡眠構造の変化がみられることがあり,主な変化としては,中途覚醒の増加,レム睡眠や深睡眠の減少の報告があります.また
別の報告では,夜間発作は睡眠構造に影響しますが,昼間に発作があっても,夜間のレム睡眠の減少がみとめられ,昼間も含めた発作が睡眠構造に
影響する可能性があります.
睡眠とてんかん発作の関係
睡眠中の脳波でてんかん性発作波が増加することが 1947 年には報告されており,その後,睡眠は脳波検査において重要な賦活法となっています.
1901 年から 1985 年までの睡眠とてんかん関連の文献をまとめた報告では,3割程度までが睡眠関連てんかんとされ,睡眠中におこりやすいてんかん発作や,睡眠中のみに発作がおこるてんかんがあります.
睡眠時異常行動とてんかん発作の鑑別
レム睡眠時随伴症 の一つであるレム睡眠行動障害(RBD)は,パーキンソン病やレビ―小体型認知症の前駆症状の可能性がありますが,ノンレ
ム睡眠からおこる異常行動のノンレム睡眠時随伴症と,睡眠中におこる睡眠関連運動亢進てんかん(SHE)との鑑別について,SHE では脳波で発作波がみられないことが多く,終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)や症状などから診断することになります.
まとめ
様々な疾患で,睡眠との関連があり,最近では,スマートウォッチなどで,ある程度睡眠状況を自分でも確認できるようになってきていますので,
そういうデータも活用しながら,睡眠について担当の先生とよく相談しましょう.
(エスエル医療グループニュース No.171 2025年12月)
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