ピルの話 あれこれ



「最近、毎日薬を飲んでるようだけどこか悪いの?」
「これはピルだよ、おばあちゃん。生理痛を和らげるためにお医者さんに処方してもらってるの。」
「えっ、ピルって避妊薬でしょ?そんなもの飲んだら体に悪いじゃない!」
「私のピルはそうじゃないの。ピルにもいろいろあるんだよ。」

そうなんです、ピルにはさまざまな用途があり、多くの女性の健康を支えています。
ピルの種類とその働きについてご紹介しましょう。

 

【月経困難症と低用量・超低用量ピル(保険薬)】

月経のたびに体調不良に悩まされる「月経困難症」。
下腹部の激しい痛み、吐き気、頭痛、過多月経、その他諸々の不調のために、学校へ行けない、仕事ができないなど、多くの女性のパフォーマンス
低下を引き起こし、大きな社会的損失となっています。
それに、例えば大事な入試の時に、月経が重なって実力が出せなかったら泣くに泣けません。

こんな月経困難症のための薬が低用量・超低用量ピルです。
このピルには、卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンが配合されています。
内服すると体外からホルモンが供給されるので卵巣は休憩、そのため排卵もなくなり、子宮内膜も厚くならないので、月経血量が減り、月経時の痛みも軽減します。

このような作用のため、低用量・超低用量ピルは子宮内膜症、もしくはそのリスクがある方に治療の一環としても推奨されています。

 

【避妊目的のピル(自費薬)】

避妊のためのピルは、「経口避妊薬(OC: OralContraceptive)」とも呼ばれます。
ホルモンの内容はほぼ同じですが、確実に排卵を抑制するために含有量はやや高い低用量のみで、超低用量の OCはありません。

OC は正しく服用すれば高い避妊効果を発揮しますが、毎日の服用が大切で、飲み忘れると効果は激減するので注意が必要です。

 

【ピルの副作用・(実はすごい)副効用】

ピルの副作用には、内服当初の軽い吐き気、不正出血、頭痛、乳房の張り感などがありますが、これらは時間が経つにつれほとんど改善します。
ただ、まれな合併症に、血栓症(血管内で血が固まり栓になる)があり、服用前に必ず医師から説明があります。

服用をやめれば通常数か月以内に排卵が再開し、その後の妊娠率はピルを使用していない女性と同じです。

実は、ピルには良い副作用(副効用)もいろいろあり、これを利用した治療が行われています。
月経の周期を整えることで月経不順を改善、排卵を抑制しホルモンの変動を少なくすることで、排卵痛、月経前症候群(PMS:月経前から月経中にかけて体調や気分の変調を起こして生活に支障を来たす病気)にも大変優れた効果を生んでいます。

ライフスタイルに合わせて月経をコントロールしたい方、例えばアスリートなどには、医師と相談のうえ、使用が推奨されています。

 

【緊急避妊ピル(アフターピル)】

避妊に失敗した場合、性行為後 72 時間以内に服用することで妊娠の可能性を減らすことができる薬です。
早く服用するほど効果が高いとされています。

薬の内容は、前述のピルとは違い、プロゲステロン単独です。
これを 1 回内服することで、排卵を遅らせたり、子宮内膜への着床を阻害したりします。

ただし、アフターピルは通常の避妊用ピルに比べて確実性が低く、排卵前なら避妊成功率は80 ~ 90%、排卵直前・排卵日では 50 ~ 60%程度
と言われています。

あくまでも緊急時の手段の一つでしかありません。

 

【ピルの正しい理解と活用をお願いします】

「おばあちゃん、私の体調が良くなったのも、このピルのおかげなんだよ。」
「そういえば、最近生理でも辛そうじゃないものね、良かったね。」

<エスエル医療グループニュース No.169 2025年4月>

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