ピロリ胃炎と除菌のお話



2013 年にピロリ胃炎患者の除菌治療が保険適応となりました。

幼少時に胃に住み着いたピロリ菌が長い年月を経て胃の粘膜に慢性の炎症を起し、ピロリ胃炎と診断される変化を起します。
慢性胃炎はありふれた病気ですがその実態はピロリ菌によって引き起こされた炎症だったのです。

それだけではなく、日本人に多い胃ガンの真の原因もピロリ菌であると認識されるようになりました。
そのような状況から、ピロリ菌を除去することで胃がんの発生を抑えることが期待されるようになりました。

除菌治療は胃潰瘍、十二指腸潰瘍など限られた病気にのみ保険適応でしたが、日本人の半数、60 歳以上ではおよそ8割の人に見られるピロリ胃炎を治療の対象としたのです。
6千万人ほどの国民が治療対象となる前代未聞、世界でも初めての試みが始まって3年たちました。

1.除菌に成功すると胃がんにならないのか

胃がんになる確率を下げることは確実です。
おそらく 40 代 50 代の比較的若いころに除菌すると、癌になる確率を半分以下に下げるでしょう。
70 代以降では 20 〜 30%下げるのが精いっぱいと考えられます。

注意すべきは、除菌に成功した人たちも胃がんになる可能性は十分あると言うことです。
しかも除菌していない人に比べて胃カメラでも見逃しやすい形態のがんとなり易いので毎年の検査は欠かせません。

2.ピロリ胃炎の診断

胃内視鏡検査(必須)でピロリ胃炎を疑われた患者さんに次の検査を行います。

6種類の検査のうち2種類までを同時に、あるいは一つの検査が陰性だった場合再度別の検査をもう一つ、保険で受けることができます。

【6種類の検査方法】
①尿素吸気試験、②便中ピロリ菌抗原検査、③抗ピロリ菌抗体検査(全血、血清、または尿を用いる)…④迅速ウレアーゼ試験、⑤組織鏡検法、⑥培養法(④⑤⑥は胃の組織を取る)

実際によく使われるのは①ですが食事を抜いてくる必要があります。
午前中であれば朝食抜き、午後なら昼食抜き。特殊な水を飲んで息を吐くだけですから簡便。
②は精度が高く、PPI製剤(オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム)を服用中であっても影響は受けないとされている。
しかし水様便の時は制度が落ちるので不可。
③は血液または尿を使用するので採血時にほかの検査と一緒に調べたり、あるいは尿中の抗体検査ならいつでもできる簡便さがある。
なお PPI 服用者は③の抗体検査以外の検査法は2週間以上休薬してからでないと保険の適応となりません。
できれば4週間の休薬が薦められています。

3.除菌の方法と結果の判定

2種類の抗生物質と1種類の PPI またはボノプラザンを一週間服用します。
失敗すれば薬の一部を変更して2次除菌まで保険で行えます。
最終的に 90%ぐらいの人が除菌に成功します。

除菌が成功したかどうかの判定は、服薬終了後2か月以上間隔をあけて行うのが良いとされています。
検査法としては尿素呼気法及び便中ピロリ菌抗原検査が良く使われます。(この時もPPI は2週間以上の休薬を要します)

4.除菌すべきか

副作用の心配が全くないのであれば、ピロリ胃炎と診断された全員を除菌するのもよいでしょう。
なかには除菌後胃がすっきりしたと言う方もみられます。

一方服薬後すっかり体調が悪くなったという方も稀にはいるようです。
日本人の胃がん罹患数は 13 万人。
死亡数は年間5万人。
除菌により胃がんになる可能性が低くなるのは確かですが一定の割合で副作用の出る方もいます。

最終的には医師の話をよく聴いたうえで患者さん自らが判断することになります。

(エスエル医療グループニュース No.143 2016年8月)

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