- 2025.9.29
- セントラル小児科
- 投稿者:院長 森 孝生

1.ワクチン・予防接種の目的
ウイルスや細菌などの微生物が体内に入り、増殖することでその微生物特有の症状を発症する病気を感染症といいます。
ある感染症に初めてかかると、体の中に抗体などが作られ、次に同じ微生物が侵入することを防ぐ働きができます。
この働きを免疫といいます。
この免疫のしくみを利用したものがワクチンです。
特定の感染症にかかる前にワクチンを接種することによりその病原体への免疫(抵抗力)を作り出し、その病気にかかりにくくします。
また、重症化することも防ぎます。
まれにワクチン接種による発熱、発疹、接種部の疼痛・腫脹等の副反応が起こることがありますが、その感染症にかかるよりはずっと軽くて済みます。
また他の人へ病気をうつす力もありません。
予防接種の普及により多くの感染症が減少してきたことはご存じだと思います。
天然痘は世界中から撲滅されました。ポリオ(小児麻痺・急性灰白髄炎)も撲滅されると思われましたが、世界中でワクチンを拒否する地域があって、現在でも撲滅できていません。
2.弱毒生ワクチン(生)と不活化ワクチン(不)
病原体であるウイルスや細菌の病原性を弱めて病原性をなくしたものから作られた「弱毒生ワクチン」(生きたウイルスや細菌が体内で増殖して免
疫力を高めていくため接種回数は少なくて済む)と、病原体であるウイルスや細菌の感染する力を失くした(不活化)ものから作られる「不活化ワ
クチン」(自然感染や生ワクチンに比べ生み出される免疫力が弱いため、何回かの追加接種が必要)と、病原体となる細菌が作る毒素だけを取り出し毒性を失くして作られる「トキソイド」があります。
最近は(生)や(不)ではない、新型コロナ感染症ワクチンのような m-RNA ワクチン(m)や、ウイルスベクターワクチンも作られ始めました。
予防接種等を接種可能時期順に簡単に説明します。
3.0歳からの接種ワクチン
①シナジス(パリビズマブ)
これはワクチンではありませんが、RSウイルス感染予防に用いられます。
RSウイルス感染症は呼吸困難など重症になりやすい未熟児等の特定の時期に保険診療として接種されます。
※昨年8月に② RS ウイルスワクチン(不)が承認されており高齢者の肺炎予防が期待されます。また、今年1月に③RSV母子免疫ワクチン(不)が承認されました。今後は妊婦へのワクチン接種を行うことで出生児~乳児へのRSV感染予防が期待されます。
④B型肝炎(不)
生後0月から 11 月まで(生後2月から8月が標準)に3回接種。B型肝炎と将来の肝がんの予防。
「母子感染予防(健康保険適用)」妊婦が HBs抗原陽性の場合は、抗 HBs 人免疫グロブリンと組み合わせて、出生直後に接種を開始し、1カ月後と6か月後に追加接種します。
出生時の母子感染(産道感染)を予防します。
⑤ロタウイルス(生)
生後6週から2回、又は3回の経口接種の2種類のワクチンがあります(生後2月から 14 週が標準)。
効果等に差はありません。
白い下痢便が特徴的な胃腸炎を予防。
⑥ヒブ(インフルエンザ菌 b 型)(不)
⑦(小児)肺炎球菌(沈降 13 価肺炎球菌結合型ワクチン)(不)
4月から 15 価ワクチンになって、さらに予防効果が高くなりました。
⑥⑦とも、生後2月から6月までに3回+1歳から追加接種1回。死亡率の高い細菌性髄膜炎等を予防します。
⑧4種混合(DPT-IPV)(不)
生後2月から3回+1年後追加接種1回。
ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオの予防。
※日本でも今年の4月から④と⑥が1本になったワクチン⑨5種混合(DPT-IPV-Hib)(不)が始まります。
⑩ BCG(生)
生後0月から 11 月(5月から7月が標準)までに1回接種。結核を予防。
※スペースの都合で残り半分「4.1 歳からの接種ワクチン」以降は後日の掲載となります。
(エスエル医療グループニュース No.166 2024年4月)
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