大腸がん予防

 

大腸がんを発見するイラスト

1.今、大腸がんは日本人に一番多いがんです

統計では、男性の10人に1人、女性の13人に1人は一生のうち1度は大腸がんになる計算となり、この25年で約2倍に増えています。
数が多いだけでなく、亡くなる人はいまやアメリカの大腸がんの死者数とほぼ同数なのです(アメリカの人口は日本の2.6倍です)。

その原因は食の欧米化の影響であると言われ、肥満やタバコ、運動不足の影響が強いようです。(まだ日本人の大腸がんが少ない時代のハワイへの日本人の移民の大腸がんの発生がアメリカ人と同等になった、とか、アフリカの黒人の大腸がんは非常に少ないが、アメリカの肥満の黒人は世界一大腸がんの発生率が高いという報告があります。)

特に肥満は、2016年に国際がん研究機関(IARC)は「肥満はタバコと並ぶ人類最大の発がん因子である」と発表しており、大腸がんだけでなくすべてのがんに良くないと認定されました。大腸がんでは、脂肪の多い牛肉(鶏肉や魚は脂肪が少なく大腸がんの危険はない)や、加工肉・保存肉(ベーコン、ソーセージ、サラミ、ハムなど)も危険因子とのことです。

運動は大腸がん予防の効果はほぼ確実なようです。
他には食物繊維やカルシウムは予防に効果がありそうです。
牛乳や乳製品については、予防するという報告が多いですが、まだ結論は出ていません。
ちなみに、便秘や下痢、下剤の長期服用は、危険因子でもなく予防効果もないそうです。

2.世界中で50歳未満での大腸がんが増加していることが問題になっています

アメリカでは65歳以上では大腸がんは減少傾向なのに50歳未満では1990年代の2倍以上です。
韓国では50歳未満での大腸がん罹患率が世界一となり話題になっています。

通常の大腸がんでは肥満、運動不足、喫煙などの影響がその危険を増加させると言われていますが、50歳未満で増加している理由はまだわかっていません。
注目されているのは子供の好きな加工食品です。
清涼飲料水に含まれる果糖、菓子の白色色素である酸化チタン、加工肉(防腐剤の影響)、乳化剤などが若い人の大腸がんへの関連が疑われています。
これらの情報は、まだ確定はしていないので鵜呑みにはしないでください。

3.大腸がん検診はとても大事です

とはいえ、アメリカでは大腸がんによる死亡は減ってきています。
その理由は検診を日本よりも高率に受けているからと言われています。
2015年には50-75歳の60 %以上が検査を受けています。

日本では大腸がん検診を受けた人は40%台(2019年)だっただけでなく、便潜血陽性の約3割の人は精密検査を受けていないようです。
便潜血検査で大腸がんが見つかるのは1回法だと約60%、2回法で約80%と報告されています。
そのため1回でも陽性の場合、精密検査が必要です。
便潜血検査陽性なのに精密検査を受けなかった人は、受けた人の4倍死亡率が高かったという報告もあります。

大腸がんを発見するにはどの方法が良いか?
実はがんの発見率では便潜血検査と内視鏡は同等と報告されています。
がんは大きくならないとあまり症状が出ないので、まず便潜血検査をおすすめします。
便潜血検査の問題点は痔で陽性になることです。
細心の注意をはらい、スムースに排便された良い便をとる必要があります。

4.大腸がんによる死亡を減らすのに大事なのは、実は「がんの早期発見」ではありません

現在、大腸がん死亡を減らすことが証明されているのは「ポリープ切除」だけです。
アメリカは以前は大腸がんがとても多かったのですが、検診とポリープ切除により大腸がんによる死亡数を半分に減らしました。
その作戦は「毎年の便潜血検査と数年に一度の大腸内視鏡検査の組み合わせ」が良いとされています(医学的だけでなく経済的、体への負担も含みます)

5.一度でも便潜血検査が陽性なら精密検査を受けておきましょう

大腸がんはいまや最もありふれたがんです。
しかし、早く見つければほぼ命には関わりません(5年生存率はステージ1で約99%、ステージ4になると約23%)。
また、ポリープをとることでがんになる危険も減ります。
精密検査は、同時に治療もできる内視鏡検査をおすすめしますが、大腸CT検査やバリウムによる注腸造影検査でもよいので、精密検査を受けることをおすすめします。

(エスエル医療グループニュース No.163 2023年4月)

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