市中肺炎と肺炎球菌ワクチン



最近、有名人が登場して成人肺炎球菌ワクチンの接種を呼びかけているテレビCMが流れています。
患者さんからも肺炎球菌ワクチンについて質問を受ける機会が増えていますので、肺炎と成人肺炎球菌ワクチンについて述べたいと思います。

1.肺炎を予防する大切さ

厚労省の統計では、日本における肺炎による死亡率は年々増加し、2014 年には死因の第3位となりました。
また、肺炎による死亡者の 96. 9%が65 歳以上の高齢者であることも示されています。

高齢者が肺炎を発症して入院すると、日常生活動作(ADL)が低下し、心身の機能が低下することが少なくありません。
回復期リハビリテーションがうまく行われないと、認知機能の低下や嚥下機能の低下、さらには寝たきり状態につながり、肺炎を繰り返しやすくなります。
こうした負のスパイラルに陥りやすいことが高齢者肺炎の大きな問題であり、肺炎の発症を予防することが健康寿命の延伸につながると考えられます。

2.肺炎球菌ワクチンについて

肺炎球菌ワクチンの接種は、肺炎予防の有効な方法の1つです。
日本での市中肺炎(一般の自宅生活をしている人が罹る肺炎)の原因菌で最も多いのは肺炎球菌で、肺炎の原因菌全体のおよそ30%を占めています。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎の予防目的で使用されます(全ての肺炎に対する予防に効果があるワクチンではありません)。

現在、成人は2種類の肺炎球菌ワクチンの接種が可能です。
1つは 23 価の莢膜多糖体ワクチンのニューモバックス ®(PPSV23)で、これは 1988年に薬事承認され、2014 年 10 月から 65 歳以上の
成人を対象に5歳ごとの定期接種が開始されました。
PPSV23 は、初回接種に限り、行政からの費用補助があります。
もう1つは 13 価の結合型ワクチンのプレベナー 13®(PCV13)で、2014 年6月から 65 歳以上の成人に適応拡大され、1回のみの接種で長く効果が期待できると考えられています。
PCV13 は任意接種となり、行政補助はありません。

日本呼吸器学会・感染症学会合同委員会が肺炎球菌ワクチン接種に関する手引き 1)を発表しています。
以下に概要を示します。
(1)60 ~ 64 歳の未接種者と 70 歳以上の PPSV23既接種者のいずれにおいても、PCV13 接種群ではPPSV23 接種群より免疫反応の向上を認めた。
(2)PPSV23 → PCV13 接 種 群 で は PCV13 → PPSV23接種群より免疫反応が低下した。PCV13 接種後にPPSV23 を接種する場合の接種間隔は、副反応を少なくすべく、6か月から4年以内が妥当とされています。

また、PPSV23 接種後に PCV13 を接種する場合の接種間隔は、1年以上とされました。
これは、両ワクチンを1年間隔で接種した海外臨床試験で重篤な副反応は認められず、軽度の副反応は単独接種より有意に少ないという結果からです。

この連続接種の考え方は、免疫原性は高いが血清型カバー率が低い PCV13 を先に接種し、その6~ 12 か月後に PPSV23 を追加接種することで、肺炎球菌ワクチンとしての血清型カバー率の拡大を目指すというものです。

肺炎球菌ワクチンの接種順として、
1)肺炎球菌ワクチン未接種者には、 ① PCV13 を接種し、1~4年後に PPSV23 を接種 ② PPSV23 接種し、1年以上空けてから PCV13 を接種 ③ PPSV23 を接種し、5年後に PPSV23 を再接種
2)PPSV23既接種者には、 ④ PPSV23 後1年以上空けてPCV13 を接種 ⑤ PPSV23 接種5年後に PPSV23を再接種
の5通りがあり、現時点では、①または④が推奨されると思われます。

しかし、PCV13 の有効性を示す報告は CAPiTA試験 2)一報だけで、日本とは国内事情も異なりますので、日本呼吸器学会・感染症学会合同委員会では、PCV13 を推奨するとの記載は無く、今後の検証が必要としており、3年以内に上記の見直しを検討する予定となっています。

参考文献
1)http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/o65haienV_150905.pdf 2015/12
2)Bonten, M. J. et al.:N Engl J Med 372(12):1114, 2015<4>

関連する診療内容:

ブログ一覧へ戻る