心臓弁膜症が最近増えています



Y さんは、65 歳の女性。
夏休みに登山をしたところ動悸、息切れが激しく、自分でも前はこんなことはなかったのにと思い近医を受診しました。
聴診で心雑音があるとのことで紹介されて、検査で心臓弁膜症であることがわかりました。
ご本人は心臓の弁の病気って先天性の病気かと思っていました。
この年になってなるとはとびっくりされていました。
心臓弁膜症は4つに分かれた心臓の部屋を区切る役割を持つ弁に異常が生じて正常に機能しなくなる病気です。
ご高齢の患者さんが増加する中で、心臓弁膜症の患者さんが非常に増えています。

1.心臓弁膜症の種類
心臓には左心室、左心房、右心室、右心房の4つの部屋があり、スムーズに血流が流れて正常に拍動するように、心臓には僧帽弁、大動脈弁、三
尖弁、肺動脈弁の4つの弁が存在します。
何らかの理由で弁の機能に異常が起きると、弁の開きが悪くなり血液の流れが悪くなる状態(狭窄症)や、正常に閉じなくなることで逆流を起こしてしまう状態(閉鎖不全症)になることがあります。

2.心臓弁膜症の原因
心臓の弁はもともと柔軟性のあるしなやかな組織で作られていますが、加齢や感染症、心筋梗塞や高血圧などによって弁の組織に変化が生じたり、
心房や心室の大きさが病的に大きくなることによって心臓弁膜症が起こるのです。

3.心臓弁膜症の検査
心臓弁膜症の正確な診断やその後の重症度の評価には心臓超音波検査(心エコー)が必要になります。
心エコー検査は通常の人間ドックの項目には入っていませんが、痛みも伴わず、レントゲンによる被爆もなく外来で比較的簡単にできる検査です。

4.心臓弁膜症の主な症状
心臓弁膜症と診断をされても無症状の患者様も非常に多くおられますが、弁膜症を放置しておくと心臓に過度の負担がかかり、心臓の機能が徐々に低下して、心不全の状態を引き起こすことになります。
その結果むくみ、息切れ、動悸、呼吸苦など様々な症状が生じます。
また、心臓への過度の負担が続くことによって心房細動などの不整脈を合併することもあります。

5.治療
①薬物治療
軽症の心臓弁膜症は、特に治療が必要ないケースが多く見られます。
その場合は定期的に心エコー検査を行い、弁膜症の進行の程度確認します。
弁膜症の悪化や心不全の出現を防ぐ 有効な薬剤も何種類もありますので、専門医が必要と判断すれば薬物療法を開始し、弁膜症の悪化を防いだり、心不全の予防や進行を抑えることが可能です。

② 手術
心臓弁膜症が悪化し心不全症状が出現し薬物療法では十分治療できない時には、手術による根本的な治療が必要となります。
機能が失われた弁を人工弁に取り替える弁置換術や、弁形成術が行われます。

③カテーテル治療
最近、ご高齢な患者さんの大動脈弁狭窄症が増えていますが、重症の場合はカテーテル治療が可能です。
脚の付け根の太い血管からカテーテルを挿入し、カテーテルの先端にある人工弁を適切な部位に留置する治療法です。
90 歳位のご高齢の患者さんに対しても、比較的安全に治療することができます。

6.まとめ
心臓弁膜症は稀な病気ではなく、よくある病気です。
診断は比較的容易ですし、早期に正確に診断をすることにより、心不全で苦しむことを防ぐことができます。
動悸や息切れ、疲れやすい等の症状がおありの時は、年のせいと言って放置せず一度循環器専門医で相談されることをおすすめします。

(エスエル医療グループニュース No.164 2023年8月)

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