- 2025.5.27
- 森川クリニック
- 投稿者:森川 建基
朝、出勤してきて8階の窓から眼下を眺めると、忙しそうに勤務先へ向かって歩く人々の姿が目に入ります。その中には、睡眠不足の人が結構多いように感じます。
人には、日々の生活のなかで疲れ、結果として自然に眠りにつける人もいますが、これとは別に、気持ちの良い睡眠――いわば「美味しい睡眠」を得るために意識的に努力しながら眠ろうとする人もいます。そうした努力が必要な人々は、年々増えているように思われます。
紀元0年頃の人々は、日の出とともに活動を開始し、日が暮れれば疲れ果てて自然と眠りにつくというのが当たり前でした。
しかし時代が進み、21世紀に入ると、文明の進化によって人々の脳――とりわけ前頭葉の機能に変化が起きました。科学者の中にはこれを「脳機能の進化」と評価する人もいます。
しかし、長年脳神経・精神疾患に携わってきた私の視点から見ると、むしろ前頭葉機能は悪化しているのではないかとさえ感じられるのです。
外来診療をしていると、患者さんは大きく2つのグループに分類できるように思います。
第一群は、昔ながらの健全な前頭葉機能を保持している人々。夜になれば自然と眠気が訪れ、一定の時間に簡単に眠りに落ちる、いわゆる「美味しい睡眠」がとれる人たちです。
第二群は、なかなか上手に寝付けず、「これでは意味がない」と分かりながらも、なんとか眠りにつこうと努力している人々です。もちろん、その中には睡眠導入剤や睡眠薬を常用している方も少なくありません。不眠症外来が繁盛している理由も、ここにあるのでしょう。
では、この第二群に属する人々が、どうすれば「美味しい睡眠」を得られるようになるのでしょうか。
実は私自身も、ガチガチの第二群の中核とも言える経験者です。この25年間、良質な睡眠を得るためにさまざまな工夫を重ねてきました。そんな経験から、少しはお手伝いができるかもしれません。
ちなみに私は、中学・高校を浄土宗系の学校で過ごしたため、多少の読経ができます。その中でも「般若心経」は、私にとって非常に効果的な睡眠導入の手段のひとつです。
次回は、この「美味しい睡眠をとる方法」について、著者自身が試してきたことを具体的にご紹介したいと思います。
エスエル医療グループニュース No.123(2010年4月発行)

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