- 2025.10.9
- 仲尾歯科
- 投稿者:院長 仲尾 泰彦

「歯科医師が予防といえばどうせ歯磨きなんだろう」と読む前から思っていらっしゃる方が大半なのではないかと思います。
確かに歯磨きも必要ですが、ちょっと読んで参考にしていただきたいと思い、今回予防歯科について書かせていただきます。
1.歯を失う2つの要因
口の中から歯が無くなっていく要因は、大きく2つあると言われています。
1つは 細菌学的要因、もう1つは 力学的要因です。
2.細菌学的要因 ― 虫歯と歯周病
細菌学的要因というのは、口の中にいる細菌により引き起こされる病気のことです。代表的なものは虫歯と歯周病です。
これに関しては歯磨きがかなり大きな効果を出しますので、とても重要です。
ただ、虫歯と歯周病に関しては原因と結果がすでに証明されているため、本来なら完全に予防ができるはずなのですが……現実は厳しく、歯磨きだけですべて解決するわけではありません。
しかし、細菌の数を減らすことは虫歯と歯周病を予防することに非常に効果があります。細菌の数を減らす効果的な方法の一番が歯磨きであることは、現状揺るがない事実です。
ですので歯磨きを疎かにすることはできません。
3.力学的要因 ― 噛み締めや歯軋り
もう1つの要因である力学的要因は、読んで字のごとく 力によって壊されていくことです。
噛み締めや食いしばり、歯軋りなど、上の歯と下の歯を接触させる癖によって歯にダメージを与え、口の中から歯が無くなっていきます。
皆さんが食事をする際、上の歯と下の歯が接触する時間をご存知でしょうか?
一日3食の食事で、接触している時間は平均約17分なのだそうです。
言い換えれば、1日17分以外に歯と歯が接触している時間は歯の無駄遣いということになります。無駄遣いをすればするほど歯が受けるダメージは増え、口の中から無くなっていくのです。
4.歯を失う連鎖反応
さらに、歯の数が減っていくと問題は加速します。
上下14本ずつで支え合っていた状態から、13・12・11本と減るごとに残された歯への負担は増え、失われるスピードも速くなります。
何とか止められないものでしょうか?
予防はできないのでしょうか?
5.力学的要因への予防方法
噛み締めや食いしばり、歯軋りなどは癖であることが多く、なかなかやめることは難しいです。
しかし、予防方法がないわけではありません。
✅マウスピースの使用
✅噛み締めを減らすための呼吸トレーニング
などによって、歯に対するダメージを軽減することができます。これも予防歯科の役割のひとつです。
また、歯を失った後に受ける治療の選択肢も重要です。
●入れ歯よりブリッジのほうが力学的負担は強い
●ブリッジよりインプラントのほうがさらに強い
つまり、力学的要因によって歯を失う可能性を低くする治療はインプラントということになります。
私はこう考えるので、インプラント治療は予防治療という側面も持っていることになります。
力学的要因による破壊に対する予防歯科は非常に難しい部分もありますが、
◇歯の数を減らさない
◇減ったら力を支えることのできる治療を受けるまたはマウスピースなどで力がかかりにくくする
などの予防方法が良いのではないでしょうか?
歯を磨くことだけが予防歯科ではない、ということが少しわかっていただけたでしょうか?
もちろん、口の中に全く問題を感じない方も多いでしょうが、少し気になるところがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。
(エスエル医療グループニュース No.164 2023年8月)
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