経口内服薬による慢性肝炎の治療



[はじめに]
我が国のB型・C型慢性肝炎患者および持続感染者は、300 万人以上いると推定されています。

慢性肝炎は、臨床的には6か月以上の肝機能異常とウイルス感染が持続している病態を指します。
慢性肝炎が長期間持続すると、肝硬変への進展、肝細胞癌の発生リスクが高くなります。

我が国では毎年約3万5千人が肝細胞癌で亡くなっています。
その約 75%がC型肝炎ウイルス(HCV)、約 15%がB型肝炎ウイルス(HBV)感染によるものです。

慢性肝炎の治療薬には、肝炎ウイルスに対して直接作用するインターフェロン(IFN)製剤、抗肝炎ウイルス薬と、肝細胞の保護に働く肝庇護薬、肝不全用の栄養製剤などがあります。
IFN 製剤はすべて注射剤です。

最近、経口内服薬の抗肝炎ウイルス薬が次々と開発され、飲み薬のみによる慢性肝炎の治療が可能になってきました。

[B型慢性肝炎]
我が国のB型慢性肝炎の感染経路は、乳幼児期までの家族内感染が主であり、成人発症の急性肝炎からの慢性化はほとんど無いとされていまし
た。
しかし、遺伝子型Aの HBV による急性肝炎では、慢性化しやすいことが最近明らかになりました。
自然経過において HBe 抗原陽性から HBe 抗体陽性へとセロコンバージョンし、肝炎が沈静化しますが、約 20%では肝炎が持続すると言われて
います。

肝硬変まで進展すると、年率3〜5%で肝細胞癌を発症します。

厚生労働省研究班のガイドラインでは、ALT31IU/L 以 上 で、HBV DNA 量 が 104copies/mL 以上の症例を治療適応としています。

IFN 治療の効果が期待できる症例では IFN 治療が原則です。35 歳以上で、血小板 15 万 /mm3 未満、または肝線維化進展例では、経口の抗肝炎ウイルス薬である核酸アナログ(NA)製剤が投与されます。
NA 製剤は HBe 抗原セロコンバージョン率や、HBV DNA 陰性化率が必ずしも高くありません。
また、長期間服用する必要があり、耐性変異のリスクもあります。

[C型慢性肝炎]
C型慢性肝炎では HCV の初感染後、60 〜 70%が持続感染し慢性肝炎となり、その後の自然治癒は極めて稀です。
約 25 年の経過で肝硬変へ進展し、肝硬変へ進展した場合は年率7〜8%で肝細胞癌が発症します。
このため、ALT 正常例も含めたC型慢性肝炎が抗ウイルス治療の適応となります。

厚生労働省研究班のガイドラインでは、ALT が31IU/L 以上の症例、あるいは血小板が 15 万 /mm3未満で肝線維化進展例を治療適応としています。

C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス療法が第一選択になります。
従来、C型慢性肝炎の治療は IFN製剤が中心でしたが、最近では経口剤の直接作用型抗ウイルス薬(DAA 製剤)が開発され、DAA製剤のみによる治療が可能になってきました。

IFN 治療は副作用が多く、今まで敬遠してきた患者さんもたくさんみえます。
DAA 製剤にも各種の副作用があり、また数多くの併用禁忌薬があるため、使用上の注意が必要です。

[B型・C型肝炎医療給付事業]
ウイルス性肝炎は国民最大の感染症であり、厚生労働省も最大の課題として取り組んでいます。

ウイルス性肝炎の治療には IFN 製剤、抗肝炎ウイルス薬が用いられます。
これらに係る医療費が高額になること、また NA 製剤については長期間に及ぶ治療によって累積の医療費が高額になることから、IFN 治療および抗肝炎ウイルス治療薬などに係る医療費の助成が、平成 20 年度から行われています。

愛知県でもB型・C型肝炎患者医療給付事業が行われており、当院も愛知県の肝疾患専門医療機関および肝炎治療診断書作成医療機関に指定され
ています。
肝炎が気になる方はお気軽にご相談下さい。

(エスエル医療グループニュース No.144 2016年12月)

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