肝臓が悪いと言われたら

健康診断の結果を見る男性のイラスト

外来で肝臓が悪いと言われたり、健康診断で肝機能異常を指摘されたりした方が少なからずおいでになると思います。

1.肝臓の働き

五臓六腑の1つである肝臓は、おなかの右上(みぞおちの右側)にある臓器で、主な働きは3つあります。

・1つ目は栄養の分解・合成・貯蔵です。
肝臓は胃や腸で消化吸収された食べ物の栄養素を、利用しやすい物質に分解・合成し蓄えます。
そして必要に応じてエネルギーなどに変えて血管から全身に送り出します。

つまり肝臓は糖分、脂肪、たんぱく質、ビタミンなどの管理をしているのです。

お酒の飲みすぎ、糖尿病や肥満など過剰の栄養摂取で肝臓に脂肪が蓄積し、肝臓の働きが低下します。
疲労感、肌荒れ、足のむくみ、糖尿病のコントロール不良、細菌やウイルスに対する免疫力の低下などが生じます。

・2つ目は有害物質の解毒・分解です。
肝臓はアルコール、ニコチン、薬剤や体内で生じた有害物質を毒性の低い物質に変えて、尿や胆汁の中に排泄させます。
必要以上にアルコール、ニコチンや薬を取り込むと、肝臓の解毒作用が追い付かず、蓄積して毒性(中毒症状)が発現してしまいます。
糖の分解産物である乳酸がたまると疲れを感じ、たんぱく質の分解産物であるアンモニアがたまると意識障害が生じます。

・3つ目は胆汁の合成・分泌です。
胆汁は肝臓から絶えず分泌されている物質で、主に脂肪やビタミンなどの吸収を助けます。
胆汁の分泌が障害されると、全身にかゆみや黄疸が生じ、便が緩く白くなります。

2.無言の臓器「肝臓」

肝臓の障害が進むと肝硬変や肝不全となり、これら3つの肝臓の働きがほとんどなくなってしまいます。
黄疸が顕著になり、お腹に大量に水がたまり、吐血や下血といった胃腸からの大量出血が起こり、肺炎や腹膜炎を発症し、昏睡状態となりやがて死に至ります。

無言の臓器といわれる肝臓は、進行増悪して初めて症状が出ます。
したがって血液検査で肝機能をチェックすることにより、無言の状態で異常を見つけることが大切です。

3.肝臓の検査

健康診断や医療機関で受けた血液検査の結果で、肝機能検査と書かれたところを見てください。
AST、ALT は肝細胞の状態を、γGT は肝臓や胆管の状態を、ビリルビンは黄疸の有無を示しています。
AST や ALT が高いと肝臓の障害が大きく、アルコールを飲みすぎるとγGT が高くなり、ビリルビンが高いときは高度の肝障害が隠れている可能性があり要注意です。
肝機能の異常を指摘されたときは、必ず精密検査を受けてください。

原因を調べるための血液検査、そして肝臓の検査で欠かせないのは腹部エコー検査です。
ベッドの上で横になって、おなかを出すだけで受けられる検査です。
肝臓の形態、肝臓にたまった脂肪の程度、胆石や肝腫瘍の有無がわかります。

以上の検査によって、ウイルス肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害、胆石症、肝硬変、肝血管腫、肝臓がんなどを診断します。

4.生活習慣の変化と脂肪肝

近年、日本人の栄養状態が改善され脂肪肝の方が増えています。
とくに若い方で遅くまで仕事をしてから夕飯を食べている人たちに増加が目立っています。
脂肪肝の約 10%は脂肪肝炎の状態にあり、炎症が持続すると線維化といって肝臓が硬くなり、やがて肝硬変や肝臓がんに進展してしまいます。
生活習慣を見直し健康を維持することが治療、さらには予防につながります。

5.さいごに

やまうち消化器内科クリニックでは、日本肝臓学会専門医として日々肝臓病の診療を行っています。
肝機能の異常を指摘された方は、ホームページや電話で予約を取ることができますので、お気軽に受診してください。

(エスエル医療グループニュース No.155 2020年8月)

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