- 2025.5.22
- おおいわ消化器クリニック
- 投稿者:院長 大岩哲哉
「人生100年時代」と言われています。最新の資料では、男性の平均寿命は79.6歳、女性は86.4歳だそうです。また、2007年に日本で生まれた子どもの半数は107歳より長く生きると推測されています。
一方で、「二人に一人が何らかのがんにかかる」とも言われており、心配な話です。しかし、がんで死亡する確率は20%程度。がんになることは避けられないかもしれませんが、必ず命を落とすわけではありません。ある程度の予防は可能ですが、完全には防げないということを理解しておくことが大切です。
がんリスクを減らす健康習慣
禁煙・節酒・運動・適正体重の維持・食生活の見直しが、がんリスクを減らす習慣として挙げられています。これらを実践することで、がんのリスクを半減できるとされています。
喫煙は肺がんだけでなく、鼻・口・喉・食道・胃・肝臓・膵臓・膀胱・子宮頸がんなど、さまざまながんと関連していることが科学的に明らかになっています。また、がん以外にも、脳卒中・歯周病・慢性閉塞性肺疾患・狭心症・心筋梗塞・腹部大動脈瘤・糖尿病などにも影響を及ぼします。
禁煙の効果は非常に高く、すべての喫煙者にとってすぐに効果があらわれます。たとえ50歳頃に禁煙したとしても、寿命は約6年延びると言われています。
食生活では、がんのリスクを高めるものとして「飲酒・肥満・加工肉」などが挙げられます。一方で、リスクを下げるものとして「食物繊維」や「運動」が確実とされています。ただし、効果やリスクは臓器によって異なるようです。
消化器がんのポイント
がんで亡くなる方の半数以上は、消化器がん(肝臓・膵臓などを含む)によるものです。ここでは、食道がん・胃がん・大腸がんについてのポイントをお伝えします。
食道がん
原因の90%以上がアルコールとタバコです。日本人の約半数はもともとアルコールに弱く、すぐ顔が赤くなる体質の人が多量に飲酒すると、発がんリスクが高まります。さらに、タバコとアルコールの組み合わせにより、がんのリスクは30倍にもなります。
胃がん
主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌の感染です。タバコや塩分の摂取でもリスクが上がります。ピロリ菌感染者の約10%が最終的に胃がんになると推測されていますが、ピロリ菌の治療により発がんリスクは1/3にまで減らすことが可能です。
大腸がん
飲酒や肥満がリスク要因とされており、ポリープの治療歴がある方は要注意です。運動によってリスクを減らせるとされています。

早期発見・早期治療のすすめ
どんなに注意していても、がんを完全に防ぐ方法はありません。だからこそ、検査による早期発見が重要です。
食道がん
以前は内視鏡検査で染色観察が必要でしたが、現在ではスイッチひとつで特殊光による観察ができ、発見が容易になりました。
胃がん
ピロリ菌に感染していない方は、発がんのリスクが極めて低いとされています。一方で感染者は、できれば毎年の検査をお勧めします。ピロリ菌治療後の方は、状態にもよりますが1〜2年に1回の検査が推奨されます。多くの自治体では内視鏡検診が導入されており、名古屋市では50歳以上の方は2年に1度、500円(70歳以上は無料)で受診できます。
大腸がん
ポリープの切除によって、大腸がんによる死亡を半分に減らせるというアメリカの研究があります。また、日本国内の研究でも、毎年便潜血検査を受けることで、大腸がんの死亡リスクを60〜70%減らせることが示されています。便潜血検査で陽性が出た場合は、必ず精密検査を受け、ポリープが見つかれば切除することが予防につながります。
最後に
不幸にしてがんが見つかったとしても、早期であれば命にかかわるリスクは大きく下がります。胃がんや大腸がんでは、内視鏡による治療だけでお腹に傷をつけずに治せるケースが増えています。
早期発見がなければ、早期治療はできません。
自分に必要な検査を、必要なタイミングで受けることをおすすめします。
(エスエル医療グループニュースNo.152 2019年8月)
名古屋市でのがん検診情報(参考)
胃がん検診
・X線検査:40歳以上、年1回
・内視鏡検査:50歳以上、2年に1回
大腸がん検診
・便潜血検査:40歳以上、年1回
参考:国立がん研究センター がん情報サービス
🔗 https://ganjoho.jp/public/index.html