- 2025.11.4
 - 古井脳神経外科
 - 投稿者:院長 古井 倫士
 
                            前々回の SL ニュースで卑弥呼を例に片頭痛に苦しんだヒトは弥生時代にもいたであろうと述べた.
なら,探れば縄文時代にもその存在を指摘できるかもと筆を擱いて気が付いた.
歴史の教科書によれば弥生時代は紀元前3世紀から世紀3世紀までの 600 年間とし,縄文時代は紀元前 80 世紀から紀元 300 年頃までの 8300 年間を示すという.
中国や朝鮮半島の影響を受けての金属器や農耕の登場をその境目にしているらしいが,縄文時代の長さは弥生時代の 14 倍近くに及ぶ.
縄文と弥生の呼称は対として耳慣れているので,なぜそんなに長さが違うのか予々なんとなく釈然としない気分であった.
われわれホモ・サピエンスの祖先は 700 万年ほどまえにチンパンジーと分かれ直立二足歩行をするようになり,400 ~ 500 万年まえには簡単な石器をつくり,素朴な言語による意思疎通もし始めたという.
一般でいう猿人である.
190 万年ほどまえにはハイデルベルク人,北京原人,ジャワ原人などの原人が現われ火を使うようになる.
石器も細かく打製して用いたらしい.
彼らはアフリカからユーラシアまで進出して 10 万年ほどまえまで活動していたという.
彼らの脳は 1000 gていどであったと推測されている.
呼称はよく耳にすると思うがこのころには欧州を中心にネアンデルタール人が登場する.
彼らの脳は現代人より若干大きめの 1500cc ほどであったという.
ところが彼らはおよそ4万年まえに絶滅し,それを凌駕したのがわれわれの直接の祖先であるホモ・サピエンスで,フランスで発見されたクロマニオン人やイタリアのグリマルディ人などが含まれ,脳の大きさをはじめほぼ現代人と同じ体型であったらしい.
猿人や原人,さらには旧人であるネアンデルタール人の活躍した時期は旧石器時代と称される.
直接的な現世人類の始まりとして新人の呼称を与えられるホモ・サピエンスは中石器時代から新石器時代にかかる4万年~1万年まえに活躍したとされる.
弥生時代が 600 年間,縄文時代が 8300 年間,世界的規模でみるとそのまえの中および新石器時代が数万年,旧石器時代が数百万年,それぞれの区別は石器の進歩や狩猟,魚撈,あるいは農耕の登場などを基準にしたものなのだろうが,時代を遡れば遡るほど時間軸が拡大していくようにみえる.
弥生時代に続くのは3世紀から6世紀の古墳時代,奈良時代が8世紀のおよそ 100 年間,これに続く平安時代は少し長く 1200 年ごろまでの 400 年間ほど,その後は鎌倉,室町,戦国,江戸時代へと受け継がれ明治以降の近代に移行し,こんにちの 21 世紀に至るのである.
これらの歴史区分の期間をおおまかに俯瞰すると数万年,8000 年,600年,300 年,100 年,400 年,100 ~ 200 年となり,現代に近づくに従って短縮して細切れになっているようにもみえる.
わが国に限らず世界的にみても古代オリエント文明は紀元前 3000 年ごろに遡り,その後はやはり小刻みに分類される時代が続く.
脳の大きさが現代人と同じレベルになったときをヒトの始まりとしても,時代が進むに連れてヒトの歴史はどんどん小刻みになってくる印象があって,素朴に考えるとヒトの進化が加速している証左のようにも感じられるのであるが,実際には新しい時代ほど遺跡が残り,文字の登場によって史料も手にできるために時代を細かく分割しやすくなったために一見そのように映るだけなのかもしれない.
ただ,そのように理解したつもりでも数万年から数千年まえまでのヒトの歴史はいかにも朦朧として長く感じられ,ときが過ぎるにつれて急速に時代が移り変わっているような感覚は否定しきれない.
石器に始まった文明というか科学は蒸気機関の発明,電気の発見,原子力の発見,二進法によるコンピュータの発明などなど,凄まじい勢いで進
歩してきた.
2024 年春には新札が発行されたが,スマホでの決済が主流になりつつあって現金を持ち歩かないものも少なくないらしい.
意思疎通の多くも面倒な対面から絵文字でごまかすメールが人気のようである.
男女平等は良いことに違いないが,少子化による人口減少は愚策を労していて止まることがない.
そのうち日本は東京だけになって地方は山と川だけになるのだろうか.
戦後 78 年(2024 年現在)だけに限ったとしても筆者にはその短い期間の変化は加速度的に写って落ち着かない.
加速度的な意味合いでよく使われる表現に指数関数的というのがある.
指数関数は一定の割合で右上がりの直線を描いていく一次関数(図1)と異なってその曲線はなだらかに始まって急速に競り上がる(図2).
横軸を時の経過とし,縦軸を文明の進歩と捉えると確かにヒトにおける変遷のようにもみえる.

しかしである.
ヒトはすべての面で進歩してきたのだろうか.
地球規模でみれば現在も数千年まえと同じように宗教の違いや国家拡大への執着による争いもどこかしこで繰り返されてもいる.
文明とは別に,文化というかヒトの精神面は発祥当初に素早い発展をみせながらもその後の数千年はさほど顕著な変化を遂げていないようにも感じられる.
そこで話を少し戻す.
指数関数は数式 y = ax で表わされる.
この y とx を入れ替えた x = ay は指数関数の逆関数と呼ばれる.
これをグラフに表わすと x と y の座標軸が逆になってしまうので,一次関数や指数関数と同じに y を縦軸 x を横軸にとるように書き換えると
対数関数 y = logax となる(図3).

この曲線は始まりから晢くは上昇するが,その後は大した上昇を欠き,なだらかに推移する.
それはあたかもヒトの精神面の進化を象徴しているかのようである.
ヒトの歴史には二面性があって,ちょうど指数関数とその逆関数(対数関数)との関係にも似ているのではないかというのが筆者の誘う本稿の落
ちである.
猛暑の夏(2024 年)に NHK の教育テレビで『3か月でマスターする数学』と銘打った番組が放送されていて,筆者も何回か興味深く視聴させてもらい,少なからずその影響を受けてしまったようです.
                        なら,探れば縄文時代にもその存在を指摘できるかもと筆を擱いて気が付いた.
歴史の教科書によれば弥生時代は紀元前3世紀から世紀3世紀までの 600 年間とし,縄文時代は紀元前 80 世紀から紀元 300 年頃までの 8300 年間を示すという.
中国や朝鮮半島の影響を受けての金属器や農耕の登場をその境目にしているらしいが,縄文時代の長さは弥生時代の 14 倍近くに及ぶ.
縄文と弥生の呼称は対として耳慣れているので,なぜそんなに長さが違うのか予々なんとなく釈然としない気分であった.
われわれホモ・サピエンスの祖先は 700 万年ほどまえにチンパンジーと分かれ直立二足歩行をするようになり,400 ~ 500 万年まえには簡単な石器をつくり,素朴な言語による意思疎通もし始めたという.
一般でいう猿人である.
190 万年ほどまえにはハイデルベルク人,北京原人,ジャワ原人などの原人が現われ火を使うようになる.
石器も細かく打製して用いたらしい.
彼らはアフリカからユーラシアまで進出して 10 万年ほどまえまで活動していたという.
彼らの脳は 1000 gていどであったと推測されている.
呼称はよく耳にすると思うがこのころには欧州を中心にネアンデルタール人が登場する.
彼らの脳は現代人より若干大きめの 1500cc ほどであったという.
ところが彼らはおよそ4万年まえに絶滅し,それを凌駕したのがわれわれの直接の祖先であるホモ・サピエンスで,フランスで発見されたクロマニオン人やイタリアのグリマルディ人などが含まれ,脳の大きさをはじめほぼ現代人と同じ体型であったらしい.
猿人や原人,さらには旧人であるネアンデルタール人の活躍した時期は旧石器時代と称される.
直接的な現世人類の始まりとして新人の呼称を与えられるホモ・サピエンスは中石器時代から新石器時代にかかる4万年~1万年まえに活躍したとされる.
弥生時代が 600 年間,縄文時代が 8300 年間,世界的規模でみるとそのまえの中および新石器時代が数万年,旧石器時代が数百万年,それぞれの区別は石器の進歩や狩猟,魚撈,あるいは農耕の登場などを基準にしたものなのだろうが,時代を遡れば遡るほど時間軸が拡大していくようにみえる.
弥生時代に続くのは3世紀から6世紀の古墳時代,奈良時代が8世紀のおよそ 100 年間,これに続く平安時代は少し長く 1200 年ごろまでの 400 年間ほど,その後は鎌倉,室町,戦国,江戸時代へと受け継がれ明治以降の近代に移行し,こんにちの 21 世紀に至るのである.
これらの歴史区分の期間をおおまかに俯瞰すると数万年,8000 年,600年,300 年,100 年,400 年,100 ~ 200 年となり,現代に近づくに従って短縮して細切れになっているようにもみえる.
わが国に限らず世界的にみても古代オリエント文明は紀元前 3000 年ごろに遡り,その後はやはり小刻みに分類される時代が続く.
脳の大きさが現代人と同じレベルになったときをヒトの始まりとしても,時代が進むに連れてヒトの歴史はどんどん小刻みになってくる印象があって,素朴に考えるとヒトの進化が加速している証左のようにも感じられるのであるが,実際には新しい時代ほど遺跡が残り,文字の登場によって史料も手にできるために時代を細かく分割しやすくなったために一見そのように映るだけなのかもしれない.
ただ,そのように理解したつもりでも数万年から数千年まえまでのヒトの歴史はいかにも朦朧として長く感じられ,ときが過ぎるにつれて急速に時代が移り変わっているような感覚は否定しきれない.
石器に始まった文明というか科学は蒸気機関の発明,電気の発見,原子力の発見,二進法によるコンピュータの発明などなど,凄まじい勢いで進
歩してきた.
2024 年春には新札が発行されたが,スマホでの決済が主流になりつつあって現金を持ち歩かないものも少なくないらしい.
意思疎通の多くも面倒な対面から絵文字でごまかすメールが人気のようである.
男女平等は良いことに違いないが,少子化による人口減少は愚策を労していて止まることがない.
そのうち日本は東京だけになって地方は山と川だけになるのだろうか.
戦後 78 年(2024 年現在)だけに限ったとしても筆者にはその短い期間の変化は加速度的に写って落ち着かない.
加速度的な意味合いでよく使われる表現に指数関数的というのがある.
指数関数は一定の割合で右上がりの直線を描いていく一次関数(図1)と異なってその曲線はなだらかに始まって急速に競り上がる(図2).
横軸を時の経過とし,縦軸を文明の進歩と捉えると確かにヒトにおける変遷のようにもみえる.

しかしである.
ヒトはすべての面で進歩してきたのだろうか.
地球規模でみれば現在も数千年まえと同じように宗教の違いや国家拡大への執着による争いもどこかしこで繰り返されてもいる.
文明とは別に,文化というかヒトの精神面は発祥当初に素早い発展をみせながらもその後の数千年はさほど顕著な変化を遂げていないようにも感じられる.
そこで話を少し戻す.
指数関数は数式 y = ax で表わされる.
この y とx を入れ替えた x = ay は指数関数の逆関数と呼ばれる.
これをグラフに表わすと x と y の座標軸が逆になってしまうので,一次関数や指数関数と同じに y を縦軸 x を横軸にとるように書き換えると
対数関数 y = logax となる(図3).

この曲線は始まりから晢くは上昇するが,その後は大した上昇を欠き,なだらかに推移する.
それはあたかもヒトの精神面の進化を象徴しているかのようである.
ヒトの歴史には二面性があって,ちょうど指数関数とその逆関数(対数関数)との関係にも似ているのではないかというのが筆者の誘う本稿の落
ちである.
猛暑の夏(2024 年)に NHK の教育テレビで『3か月でマスターする数学』と銘打った番組が放送されていて,筆者も何回か興味深く視聴させてもらい,少なからずその影響を受けてしまったようです.
(エスエル医療グループニュース No.168 2024年12月)
関連する診療内容:

