- 2025.6.3
- どい眼科クリニック
- 投稿者:院長 土井浩史

(はじめに)
緑内障とは、視神経が障害されることで視野が狭くなり、部分的に見えにくくなる病気です。原因の一つとして眼圧の上昇が挙げられますが、視神経の強さには個人差があるため、正常な眼圧でも緑内障になる方もいます。これは「正常眼圧緑内障」と呼ばれ、日本人に最も多いタイプです。
疫学調査によると、正常眼圧緑内障は全体の約70%と高い割合を占めており、現在では「緑内障=視神経と視野に特徴的変化を認める疾患」と定義され、眼圧は診断基準から除外されています。
一方で、診断基準からは除外されたものの、治療上は眼圧を下げることが最も有効な手段であることが、数多くの研究で明らかにされています。
(緑内障の種類)
① 原発閉塞隅角緑内障
遺伝的要因や加齢による変化により隅角が閉塞し、眼圧の上昇によって視神経が障害されるものです。
急性型:強い眼痛・頭痛・視力低下・嘔吐などの症状があり、緊急処置が必要です。
慢性型:自覚症状がないことが多いですが、軽い頭痛や眼痛を感じる場合もあります。
② 原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障
どちらも慢性進行性の視神経症で、視神経や網膜神経線維層に特徴的な変化があります。
眼圧が 21mmHgを超えるものを「原発開放隅角緑内障」
20mmHg以下のものを「正常眼圧緑内障」 と呼びます。
③ 続発緑内障
他の眼疾患・全身疾患・薬剤によって眼圧が上昇し発症する緑内障です。
例:眼の炎症、眼底出血、糖尿病、ステロイド薬の使用など。
(検査)
① 隅角検査
隅角鏡という特殊なレンズを使い、隅角の広さや新生血管、炎症性滲出物、癒着の有無を確認します。最近では前眼部OCTにより、非接触での隅角検査も可能です。
② 眼圧検査
空気を当てて測定する方法と、器具を直接眼に接触させて測定する方法があります。後者の方が精度が高く、標準的に使用されるべきです。
③ 眼底検査
視神経乳頭や網膜神経線維の異常を確認します。視野異常に先立って検出できることも多く、非常に重要な検査です。
④ 眼底三次元画像解析(OCT)
視神経線維の厚みを計測し、緑内障の早期変化を検出します。機器の精度向上により、重要性が増しています。
⑤ 視野検査
目を動かさずに、見えている範囲を確認する検査で、視野欠損の有無や進行具合を判断します。緑内障の経過観察には「静的視野検査」が使われ、年3~4回の実施が推奨されています。
(治療)
緑内障の唯一確実な治療法は「眼圧を下げること」です。目的は、現在の視野を維持することにあります。
そのためには、視野進行を防げると考えられる「目標眼圧」を設定する必要があります。これは、
緑内障の病期
無治療時の眼圧
年齢
家族歴
視野障害の進行速度
などを総合的に判断して決定されます。
通常はまず点眼治療から始め、目標眼圧まで下がればその治療を継続します。点眼薬を変更・追加しても改善しない場合は、レーザー治療や手術治療が検討されます。また、視神経を保護したり眼血流を改善したりする内服薬を併用することもあります。
(さいごに)
緑内障、特に日本人に多い正常眼圧緑内障は、極めてゆっくり進行するため、視野欠損に気づかない方が多い病気です。
残念ながら、現在の医療では緑内障そのものを治すことはできません。つまり、一度欠けた視野は元に戻りません。しかし、進行を抑えることは可能です。
そのため、何よりも早期発見・早期治療が重要です。
実際に、日本人の40歳以上の20人に1人が緑内障にかかっているとされ、そのうち80%以上が未発見といわれています。特に強度近視の方や、血縁者に緑内障の患者さんがいる方はリスクが高いとされています。
40歳を超えたら、1~2年に一度は眼科検診を受けることをおすすめします。
(エスエル医療グループニュースNo.158 2021年8月)
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