非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは?
肝臓は肥満の影響を受けやすく、肥満の増加に伴い、脂肪肝の有病率も増加しています。脂肪肝の発生率は体格指数(body mass index:BMI)が25以上の軽度~中等度肥満で50%、30以上の高度肥満では80%以上になります。BMIが25未満の非肥満者でも約13%に脂肪肝がみられます。
脂肪肝は肝細胞内に過剰の脂肪が沈着する病態で、アルコール性と非アルコール性に分けられます。
アルコールは肝炎ウイルスと共に肝臓病の主要な原因の1つです。アルコールの過剰摂取により、脂肪肝、肝線維症、アルコール性肝炎、肝硬変などの肝障害が起こります。
脂肪肝はアルコール以外に、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が原因であることも多く、メタボリック症候群(Metabolic Syndrom:MS)とも密接に関係しています。
従来、急性妊娠脂肪肝や小児のReye 症候群、Wilson 病などの特殊なものを除いて、非アルコール性脂肪肝は予後良好とされていました。ところが、近年、非アルコール性脂肪肝の中に肝硬変、肝細胞癌、肝不全へと進行する予後不良なものが存在することが明らかになりました。これは非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)と呼ばれ、非アルコール性脂肪肝の約1%程度と推定されています。
NASHは脂肪肝を基盤に発症するため、脂肪肝は治療を要する病態と考えられる様になってきました。脂肪肝にMSが加わるとNASHへ移行する可能性が高くなります。B型、C型肝炎以外にNASHによる肝細胞癌の増加が今後危惧されています。
脂肪肝は肝生検組織の病理検査で確定診断されますが、肝生検は出血などのリスクを有するため、日常的には超音波検査やCT検査などの画像診断で診断されます。
血液検査でトランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇が認められるのは脂肪肝の30%程度で、NASH にも正常例があります。肝疾患の重症度の指標は肝線維化で、血小板数の低下やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、Ⅲ型プロコラーゲンペプチドの上昇などが肝線維化を反映します。NASHではインスリン抵抗性の存在や高感度CRPも参考になります。
脂肪肝は生活習慣病・MSの肝病変でもあり、NASHなどでは肝硬変への進行や肝細胞癌も発生しうることの認識が大切です。そして、生活習慣の改善を基本として、定期的検査や治療が必要と思われます。